竜鳴き谷へようこそ「エリゼー村料理の鉄人・前編」

2035-08-25

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オフセット A5 60P 200円

竜鳴き谷シリーズ、第四巻
ゼルダとセリカ、仮面の白魔法使いたちの活躍で平和を取り戻した(?)エリゼー村。
そんな時、ふいに持ち上がったお祭りの話が、エリゼー村に新たな騒動を持ち込むことに……。

↓冒頭を読む↓
 ここはお馴染み、エリゼー駅。事務室ではいつものようにリンツが、一人で黙々と溜まりに溜まった書類の山と格闘していた。
「大変なのよう! 大変なのよう!」
 書類の山が気持ち減ってきたかな……、とリンツが思えるようになってきた頃、突然リンツの頭上で切迫した感じの少女の声があがった。声の主は、こちらも毎度お馴染み、伝令精霊のルフィナだ。
 ルフィナはしばらくリンツの頭上で大変なのよう! を連発し、フワリとリンツの目の前に着地した。
「おい……」
「なぁに? リンツさん」
何故か不機嫌そうに自分を見下ろすリンツを、ルフィナは不思議そうに見上げながら首を傾げた。
「足の裏、見てみ……」
「足の裏? なんで」
「いいから!」
 ますます不機嫌になっていくリンツの声に、ルフィナは恐る恐る自分の足の裏を見る。
「あ、あれれ。なんか真っ黒になってる……ね?」
そう、ルフィナの足の裏は真っ黒けだった。そして、リンツが仕上げた書類の上には小さな可愛い足跡がいくつも点々と……。
「おまえなあ……」
「えへ、えへへへへ……」
 じわじわと怒気オーラを漂わせ始めているリンツの目の前でカチコチに固まって動けなくなるルフィナ。
「おまえはどーしてそう、いつもいつもいっっっつも仕事の邪魔をするんだっ。しかも決まって書類書いている時にっ!!」
「えっ、えっとそれはあたし達、精霊の性格というか、特性というか、不可抗力というか……」
 必死に愛想笑いしながら、あたふたと弁解するルフィナ。って、全然弁解になっていない気もするが……。
「ほー、そう言うか。じゃあコレも不可効力になるな」
そう言って羽ペンをルフィナにちらつかせるリンツ。
「あのぅ、これって前も……」
「あったな」
 きっぱり即答するとリンツは羽ペンを振りかざした。
「キャハハハハハハッ! や、やめて、やめてよう! お腹がよじれて……。キ、キャハ、く、苦しい~。こ、これ以上笑わせないでぇ!!」

「……で? 今度はいったい何があったんだ」
 机の上で、笑い狂って目を回しているルフィナを見ながらリンツが問う。
「ゼェゼェ……。あ、あのね。あさっての一番列車から運転を再開させるって」
「なっ、なにぃ。それは本当か?」
「うん」
「ヤッタァッ! これでもう胃が痛くなったりしないぞっ」
 リンツは喜びに喜んで、事務室の中を飛び跳ね回った。思えば苦節約一ヶ月。リーナからは『ヒマ人』だの『賃金ドロボー』だのとバカにされ、反撃に転ずるも返り討ちにされて笑い飛ばされ、さらにその場にいたリノル姫にまで笑われ、旅人や商人達からは『いったい何時になったら動くのか』と詰め寄られ、ほぼ毎日のように『今日も走らないんですか……』と落胆するリノル姫の姿に胃に穴が開く思いをし、それを知ってか知らずかリーナに『ストレス溜めたほうが肝臓って美味しいんだってね』と冷やかされたり等々。今までの追いつめられた日々を考えれば、それだけに喜びも大きい。そして開放感も。
「お、落ち着いてよう。そんなにはしゃぐと……」

 ガツンッ!

「ぃっぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~」
「だから言ったのに……。リンツさん生きてる?」
「ぃっぅぅ~……。ぅ、ぅ、のああああっ! いってぇぇぇーっ!!!」
 勢い余って足を滑らせ、机に後頭部を激しくクラッシュさせるリンツ。あまりにも痛かったらしく、頭を抱えてドッタンバッタンと床の上をのたうち回る。それを見たルフィナが小さい体ながらにリンツを介抱しようと慌てて飛び寄る。
「おお~、いてぇ……。っと、こうしちゃいられない。早速告知しないと……」
「あっ、あたしも手伝う!」
 しばらくして、よっこらせと起きあがり、まだ痛む頭をさすりながら机の上を片付けるとリンツは、ルフィナに大きめの紙を戸棚から持ってこさせ、大急ぎでポスターを作り始めた。

履歴書の封筒さんのコメント

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

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