竜鳴き谷へようこそ「快適な陸の孤島生活」

2035-08-25

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オフセット A5 52P 200円

竜鳴き谷シリーズ、第二巻
村人からひどい仕打ちを受けたミュンを励まそうと弓使いの姉妹、ゼルダとセリカの二人はミュンのもとへ向かいますが……。

↓冒頭を読む↓
1 快適な陸の孤島生活・朝

「今日もダメか……」
 信号所からの報告に目を通しながら、エリゼー駅の駐在職員であるリンツ=ウアファールは無気力にパンをかじった。その横では駅間の伝令を司る風の妖精、ルフィナが自分の口よりも大きなクッキーと格闘している。「細かく砕いて食べれば良いのに……」とリンツは思うのだが、本人が構わないと言うのでほったらかしにしている。
「いいよな。ルフィナはのんきそうで……」
「え、なぁに?」
 クッキーと格闘していたルフィナが呑気な声でリンツの方を向いて聞き返す。
「なあ、なんでルフィナはそんなに幸せそうなんだ?」
「なんでって、お腹いっぱいクッキーが食べれるからに決まってるんだよう。……リンツさんは幸せじゃないの?」
 ルフィナが心配そうな顔でリンツのもとへ飛んでくる。
「別に不幸、って訳でもないけどさ。でも、ねえ……」
 リンツは、さっきの信号所からの手紙を少し読み返して、また無気力にパンをかじった。
「パンか……。パン屋もいいなあ……」
 リンツは食べかけのパンを眺めながら呟いた。


 ここはご存じ、エリゼー村にある山猫のランプ亭。
 今日も今日とてランプ亭の店主兼看板娘のリーナが箒をせっせと動かし、店の前を掃除して……いない。代わりに見知らぬ獣人族の少女が掃除をしていた。
 で、そのリーナはというと店の奥にある貯蔵庫で帳簿とにらめっこをしていた。どうやら、食材や酒類、調味料などの在庫のチェックをしているらしい。そんなリーナの所に、掃除を終えたらしい先ほどの見知らぬ獣人族の少女が顔を出した。
「あ、リーナさん。外のお掃除終わりました~」
「じゃあ、次はお店の中をお願い。……ごめんね、プティル。今ちょっとあたし、手が離せないのよ」
「はいっ、わかりましたー」
 プティルは元気に頷くと、パタパタと貯蔵庫から出て行った。
 さて、このプティルという獣人族の少女。実は竜鳴き谷に謎の大風が吹き荒れだしてから数日後、谷を渡れなくなった旅人達で、ランプ亭が今まで以上にごった返してしまい、パンク寸前まで追い詰められたリーナがついに一人お手伝いを雇った。それがプティルという訳だ。

 しかし焼け石に水。

「さて、と。帳簿もチェックしたし。あたしも中の仕事しなきゃね」
 もう一人か二人雇おうか、そんな事を考えながらリーナは店へと戻っていくのだった。

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