竜鳴き谷へようこそ「竜鳴き谷と謎の風」

2035-08-25

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竜鳴き谷シリーズ、第一巻
竜の爪がえぐったかのような深い谷が連なる地、竜鳴き谷。
そんな竜鳴き谷に起こった大きな異変とは……。

↓冒頭を読む↓
 龍鳴き谷に朝日が差し込み、教会の鐘の音が谷の澄んだ空気に響き渡る。
小鳥達は空で歌をさえずり元気に飛び回る。その小鳥達の歌を合図にエリゼーの村は、少しずつ目覚めていくのである。

 竜の巫女、ティーネ=スフォリアの朝は、神竜に祈りを捧げる事から始まり、教会の鐘を鳴らし花壇の手入れや掃除など、朝の家事を済まし朝食を食べる事で終わる。
「今日も良いお天気……。これも神竜の恩恵の賜物ね」
 ティーネはそう呟くと、食後のお茶をゆっくりと飲みながら谷の景色を眺めていた。
 しばらくするとティーネの耳に、谷を出発する朝一番の汽車の汽笛がやまびこのようにエリゼーにこだました。
「そう言えば今日はエリニースの街から見習い巫女が来る日だったわね。迎えにいかないといけないわね」
 汽笛の音で思い出したのか、ティーネは少し慌てながら壁に貼ってある駅の発車時刻表と時計を交互に見比べた。
「さてと、まだ時間に余裕があるけど駅に行って待っている事にしましょう」
外出の準備を整えたティーネは、ゆっくりとした足取りでエリゼー駅へと歩いていった。

 ところ変わってここはエリゼー村の中心地。一人の少女が店の前の通りをせっせと掃除していた。そして少女は通りの向こうからやってくる人の気配に気が付くと、掃除を止めて手を降り始めた。
「おはようございます。ベイヤーさん」
「おはよう、リーナ」
リーナと呼ばれた少女はペコリと頭を下げるとまた掃除を再開した。
「リーナ、今日も元気に働くんだぞ」
「ベイヤーさんこそ、真面目に畑を耕してきなさいよねーだ」
 リーナはあっかんべーをしながらベイヤーに笑いながら言い返した。
「ハッハッハ、そりゃそうだ。どれ、帰りに美味い野菜をどっさりと届けてやるからな。楽しみに待っとれ」
「うん!楽しみにしてるからね」
 リーナは嬉しそうな表情で答えた。
「ああ、リーナこそ美味い食事を期待しとるからな」
「まかしといてよ」
 ベイヤーの問いかけにリーナは、腰に手をあてエッヘンと威張って見せた。
「それじゃ、またな」
「うん、気をつけていってきてね」
 ベイヤーは下ろしていた農耕具をよいしょと担ぐと、軽い足取りで自分の畑へと歩いていった。
「さてと、掃除も終わったし。お茶でも飲んで一休みしようっと」
ベイヤーを見送ったリーナは、パンパンと服をはたくと店の中に入っていった。

「……リンツさん。いつまでここで油売ってんの!?さっさと駅に戻りなさいよっ」
リーナが呆れた感じで店のカウンターに向かって叫んだ。すると、
「るせー。一日に三便しか汽車はやってこないんだ。少しぐらい駅に誰もいなくたってまったく問題な~い」
 リンツと呼ばれた青年がひょいとカウンターから顔を出し、また引っ込めた。それを見たリーナは、やれやれといった感じで持っていた箒を振りかざす。

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