深紅の巫女サフィ「サフィと深紅のマント」

2035-08-25

Tag :

オフセット A5 92P 300円

ドタバタ冒険活劇、第一幕。
大巫女より深紅のマントを聖王都へ運ぶという任務を命じられた見習い巫女サフィと神殿騎士カイは、一路聖王都シュトロハイゼンを目指しますが、その旅立ちは前途多難のようで……。

↓冒頭を読む↓
 雲ひとつない青空。見渡す限りどこまでもつづく草原を、蒸気機関車がひとすじの煙を空になびかせて、十二両の赤い客車を引っぱって南へ南へと走っていきます。
 その汽車の6両目の客車、二等寝台の一室で一人の少女が一生懸命に手紙を書いていました。少し開いた窓からの風が少女の蜂蜜色の髪の毛をふわりふわりと揺らします。少女は風で揺れる髪をときおり手で押さえながら、瞳とペンを右から左へ端から端へと走らせていきました。

“親愛なるレティ。
 ウィルーナ様や教会のみんなは元気ですか? あたしは元気です。初めての汽車の旅は、色々と不便な事もあって思っていたより大変だけど、なんとか慣れてきたところです。ただ、はじめは汽車の外から見える景色や街の姿がとても珍しくって、一日中外を見ていたのですが、昨日から草原がずっといていて、ちょっと退屈してきました。ああ早ぐ…”

「ああっもう! またヘンテコになっちゃった」
 頭を抱えて少女は、今まで書いていた手紙をくやしそうにクシャクシャと丸めました。今まで何回も失敗したのでしょう。少女のまわりには、丸められた紙がいくつも転がっていました。
「もう、いいかげんにあきらめたらどうですか、サフィ。紙がもったいないですよ」
 サフィと呼ばれた少女の横で窓の外を眺めていた少年が、やれやれといった感じで言いました。
「だって、今日のうちにこの手紙だけは書いて送りたいのよ」
「だったら、駅に止まったときにさっと書いて、さっと送っちゃえばいいじゃないですか」
「そんなことできる訳ないじゃない。あたしは思ったことをすぐに書きたいの。それにもし、駅に着くまで待っていて、いざ書こうとしたら内容を忘れちゃった、なんて事になったらどうするのよ。そうなったらカイのせいだからねっ」
「そんな~。なんで僕のせいになるんですか。すぐ失敗するサフィが悪いんですよ」
「う~、うるさい~」
「いたたたた。ご、ごめん。サフィ、ごめんって」
 サフィは頬っぺたを膨らませてカイと呼んだ少年をぽかぽか叩きました。
 さてこの二人。こう見えても実は、シエルティア王国の竜の巫女と神殿騎士なのです。
その証拠にサフィの胸には巫女の証である竜霊石のペンダントがかかっていますし、カイは竜の刻印がある剣を持っていました。
 二人は大神殿の大巫女様の言いつけで、シエルティア王国からはるか遠く離れたシュネー聖王国まで旅をすることになり、二日前から汽車、それもシエルティア王国国鉄の看板列車、急行ティスティリア号の乗客となったのでした。
 サフィは窓の外を眺めながら、ふいにカイに話しかけました。
「ねえ、カイ。あたしたちがティスティリア号に乗っているなんて、夢みたいだと思わない?」
前から後へ、窓の外に広がる今まで見たこともない景色を眺めてサフィがうっとりとした感じでつぶやきました。

コメントの投稿

非公開コメント

アクセスカウンタ